エイミー・チュア (著), 徳川 家広 (翻訳) 「最強国の条件」 ★★★☆☆

エイミー・チュア (著), 徳川 家広 (翻訳) 「最強国の条件」

きっかけ=歴史モノに詳しい友人S氏にお借りして(そのあと自分でも購入)。

「ものすごくよくできた卒論」という印象の本でした。
というと、なんだか偉そうで申し訳ないのですが、論旨は理路整然としてわかりやすく、大変おもしろかった一冊です。


まず、著者の強烈な個性に興味が沸きます。中国系アメリカ人の美しく知性的な女性で、イェール大学ロースクール教授。「著者あとがき」によると、中国の貧困な家庭に生まれながら、夢をかなえるために渡米した父と母の間に生を受けた同氏は、異常なほどのスパルタ教育を受けて育つ。家では中国語を話すことを強制され、少しでも英語の単語が口をついて出れば「お箸でぴしりと叩かれ」、学校の歴史論文コンテストで二位になった授賞式で、他の生徒が「万能生徒」のキワニス・クラブ賞を勝ち取った場にいた父親からは、ことあるごとに「二度と、あんな恥をかかせるな」とお説教される。そんな子ども時代を送った彼女は、その後ハーバード大学ロースクールを卒業、イェール大学の教授になるという晴れがましい経歴をたどる。

そんな彼女が二人の娘を持つと、またもや強烈な中国式スパルタ教育を行ったのだ。その赤裸々な体験記を「タイガー・マザー」という書籍に著し、全米で教育論議を巻き起こすベストセラーになったとのこと。この「タイガー・マザー」、かなり過激でおもしろそう匂いがするので、近々読んでみたいと思います。



さてさて、前置きが長くなりましたが、この著書の論旨は簡潔明瞭です。

「歴史上、同時代において他を大きく引き離し、一極優位の圧倒的な力を持つ『最強国』が何度か登場する」
「『最強国』であるための重要な要素は、『寛容さ』である」
「『最強国』が衰退する時期は、寛容さの喪失と期を一にしている」

彼女の定義する『寛容さ』とは、愛とか優しさとか慈悲とかそういう部類のものではなくて、国、人種、信仰の異なる人々に対して、社会的向上を目指すチャンスが(他国に比べて)開けていたか、ということです。

『最強国』というと、現代ではすぐに「アメリカ合衆国」をイメージするでしょう。90年代のような圧倒的支配力はなくなったとはいえ、今もアメリカの優位は変わりません。
古代からの歴史を紐解くと、ローマ帝国、唐、モンゴル帝国、近代になるとオランダ、イギリス、そしてアメリカが、いかにして『最強国』となったかを検証し(彼女の定義では、決定的に重要なのが『寛容さ』である)、さらに将来のポスト・最強国の可能性として、中国、EU、インドを検討している。また、最強国になれなかった原因について、ナチス・ドイツと大日本帝国の不寛容も挙げている。

洋の東西を問わず、古代から近現代、さらに近未来予測まで、『最強国は寛容である』というテーマでざっと紹介されるというのは、世界の昔から今までの総集編のベスト盤という感じで、そりゃあ面白くない訳がない。

信仰がすべての価値観と生活の中心になる中世以降に入ると、どの国も不寛容さが極限まで到達してしまいます。ユダヤ教徒や、キリスト教でもルター派などカトリック以外の教派の人は、残酷な処刑を受けたり、国を追い出されます。その中で、「ま、おとなしくしててくれれば、信仰は自由にやっていいですけど」という『寛容』な国があると、ユダヤ人やプロテスタントが続々となだれ込んできます。
それがオランダであり、次にイギリスであり、そして第二次世界大戦となると、ユダヤ人はアメリカに渡るしかない。結果的に、その国は優秀な人材を吸引し、他を引き離した経済力をつけることにつながってゆきます。


振り返って、今の日本。どんどん右傾化していっていますね。つまり『非寛容』です。しかし、そもそも日本は『最強国』になりそこなった国ですし、これからもそのポジションにはなり得ない、また目指さないでしょう。また、著者も認めていますが、『寛容さ』は、『最強国』の必要条件ではあれ、十分条件ではありません。これから日本はどのポジションを取り、日本人はどう生き延びるのか。改めて『寛容さ』だけでは立て直せないな、と感じた次第。


ちなみに、本書に出てくる『最強国』で、いちばん面白かったのは「唐」でした。わたしが学生時代きちんと勉強しなかったせいでほとんど忘れていたこともあり、えっそうだったっけと思ったのですが、太宗、玄宗の二代名君が治めたこの時代に、則天武后と楊貴妃が出てくるんですね。いやすごいですよ、則天武后。科挙制度を改革したんですね。愛人の四肢を切り落として酒樽に放り込んだことしか覚えてませんでした(笑)

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